8A病棟  Sさん

私が名古屋記念病院に入職したきっかけは、臨床実習で出会った患者様とその患者様に関わる看護師の姿に感銘を受けたことでした。受け持たせていただいた患者様はがん終末期にあり、受け持ち2週目に入り病態が悪化し亡くなられました。私は祖母をがんで亡くし、「死」に対しての恐怖心があり患者様との関わりのなかで臆病になっている部分がありました。その際、指導にあたっていただいていた看護師は急変による慌ただしい場の中においても常に患者様のベッドサイドに寄り添い、最期を迎えられる患者様とその御家族に対して声をかけられていました。亡くなられたあと、私は看護師とともにエンゼルケアに入らせていただき、その患者様の人生を振り返り、その人がその人らしく最期を迎えられることを支援する看護のあり方を学ばせていただきました。「ここでなら、私の目指す心に寄り添う看護ができるのではないか」と思い入職を決意しました。
看護師となり2年目に入り、少しずつではありますが自分の看護観を見つめながら患者様と向き合えるようになってきました。しかし、知識・技術ともに未熟な部分が多くあり、日々の看護のなかで悩み、自分は看護師には向いていないのではないかと立ち止まることもあります。そんなとき、いつも背中を押してくれるのは患者様とその御家族の笑顔や言葉掛けでした。

長い闘病生活を終え、先日亡くなられた患者様はお会いするたびに「大変な仕事だね。でもあんたはいい看護師になるよ。頑張りなよ」と、いつも笑顔で力強く言葉を掛けてくださいました。しかし、病態は進行し疼痛が増強するにつれ、患者様から笑顔は少なくなっていきました。「何でこうなったんだろう。お父さんを残して逝くのが辛い。今年はブルーベリー狩りに行けなかったな」と、本音を話される姿に胸がいっぱいなったことを覚えています。患者様が亡くなられる朝、夜間から付き添われていた御家族と患者様とのこれまでの思い出をお話する機会がありました。「ブルーベリー狩りに行きたいって、つい最近まで言ってました。でも行きたいと思った場所は二人で行ってきました。悔いはありません。今日あなたが担当でよかった。ありがとう」と御家族の涙が溢れました。同時に、私も涙を抑えることができませんでした。

「生」と「死」と常に向き合う看護師として、何が正しく、何が正解の看護であるのかいつも疑問に思います。しかし、一つ一つの現実を受け入れ、迷いや失敗、悲しみ、喜びを患者様とともに分け合いながら、感謝の気持ちを伝えていけたらと思っています。これまで出会った多くの患者様と御家族の思いを胸に刻みながら、患者様の心に寄り添うことのできる看護師を目指していきたいと思います。
このページの一番上へ
Copyright © 2007-2014 Nagoya Memorial Hospital Allright reserved.